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のん木草・みどり見て歩き

ポットのフタ付きのようなムクロジの果実

深大寺、広福寺などのお寺や王禅寺ふるさと公園や宿河原緑化センターなどに、冬になるとよく落ちています。これはひろってきたムクロジの果実です。枝に付いている部分に、ポットのふたのように見える不思議なものがあります。これは、雌花の時に、将来、果実に育つはずの三つの袋が用意されていますが、実際に実に育つのは、一つだけで、残りの二つの袋はしぼんでつぶれ、柄の傍らに痕跡として残っているのです。専門用語で言えば、花の子房は袋状で3つにさけ、3つの心皮からできています。受粉して、それぞれ独立して分果し、そのうち1つが大きくなります。未発達の2つの果実はしぼんでつぶれ、大きくなった果実にくっつきます。
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緑色の実1個
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これがヒントかな二つの実
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さて、ムクロジ(無患子、 ムクロジ科ムクロジ属)について、復習してみましょう。
ムクロジは温暖な地域に植栽される、あるいは半野生化する高さ15m程度になる落葉高木です。大きな羽状偶数複葉を持ち、6月頃に円錐花序にたくさんの花をつけます。11月中旬には、黄葉し実が熟しています。
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果実は直径約2cmの球形で、10~11月に熟すと黄褐色になり、翌年まで、結構枝に付いています。本日1月31日にも、宿河原緑化センターでは、枝に実をつけていました。
果実をつけた樹形。
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果皮は半透明のあめ色で、昆虫などに有害成分となるサポニンを多量に含んでいますので、あまり食べられることがなく、枝に残っているようです。
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果実の果皮はつやのある黄褐色の半透明になり、果実を割ると、その中に一個の黒い種子があります。種子はとても堅く、割るのに80~160kgの力が必要だと書かれています。山では、ネズミやリスが冬の食糧として、食べているとのことです。割って食べたことはありませんが、コクのあるナッツの味で、油脂分が豊富だとのことです。あまり、動物にたべられないように、果皮のサポニンで防禦したうえ、更に、種子の堅い殻が
二重にまもっているのでしょう。また、煎って食べることもできるそうです。
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硬い種子を割って、中味を覗いて視ました。
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果実、種子、種子の中味を並べてみました。
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黒い種子はよく弾むので羽子板の羽のおもりとして利用されたり、磨いて数珠の玉にも使われています。みどり学の某先輩は、無患子のお守りを作っておられ、いただいたものです。
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属名のムクロジ属の学名であるラテン語(Sapindus)は、 “石けん”を意味する“sapo”と“インド産”を意味する“indus”をつなぎ合わせたものです。果皮には多量のサポニンを含み、水を泡立てる働きがあるので、昔は石鹸の代用として、洗濯などに広く利用されてきました。試しに3個分の果皮を水の入ったペットボトルに入れて振ってみました。とてもよく泡立つことに驚きました。昔は、発泡剤として泡消火器にも詰められたそうです。
現在の日本では油脂から作る石けんや合成された洗剤が主流を占めるようになりましたが、アジアの諸国では今なお天然のサポニンを含む植物を利用しているところがあるようです。
実験してみました。ペットボトルに果皮と水を入れ、振って泡を立ててみました。よく泡立ちます。
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なお、ムクロジ科には、熱帯果物として人気のあるレイシ、ランブータン、リュウガンや日本でも観賞用に植えられるツル植物のフウセンカズラ、モクゲンジなどが属しています。

なお、ムクロジで冬に見られるものに、冬芽と葉痕があります。高木でなかなか見られることが少ないのですが、枝が下に張っている木にあったら、是非見てください。
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本日は、ムクロジの果実について、勉強してみました。
明日1日は、かわさき市民アカデミーのみどり学のサークル「みどり会」と「葉っぱ会」合同の見て歩き会と懇親会を行います。明後日2日は、山の会の2月定例山行で、房総半島の伊予ケ岳へ行きます。更に、3日は、みどり会2月観察会の下見で、夢の島熱帯植物園などに行く予定です。
従いまして、明日より3日間は、パソコンに向き合う時間が取れそうもないので、ブログをお休みします。
以上
by midori7614 | 2012-01-31 16:10 | 身近なみどり
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